こんばんは、村上碧です。
「好きを仕事に!」「好きなことで豊かに!」というキーワードが喧伝されるようになって久しいですが、ネット上でもいつしか「占い師」という職業が悠々自適に働ける!と注目されるようになり、占い師になって稼ぐことを目的とした情報商材などをたびたび見かけるようになりました。
わたし自身もごくまれ~に
「占いを勉強し起業して、マイペースに働きつつ豊かに暮らしたい」
「会社勤めが嫌なので、フリー占い師ととして気ままに仕事したい」
という方から、直接ご相談のようなお問い合わせをいただくことがあります。
閉塞感たっぷりな今の日本の状況的に、このような気持ちを抱くのも致し方ないなと思うことはなきにしもあらずですが…
このようなお問い合わせは、
「稼げるなら手段はなんでもよい(=とりあえず占いが稼げそうだと思っているが、占いそのものに愛着はない)」
「なんかとりあえず会社辞めて自由になりたい」
…という安易な考えが根本にあると思われるケースも多くて、ちょっと気になっています。
一応お断りしておくと、わたしは講座を開いてはいますが、「『稼げるので』占い師になりましょう!」という売り方は一切していないですし、一般社会はおろか占いの世界の中ですらもほぼ意味をなさない、独自資格の発行・付与などもしておりません。
それにわたし自身、これまで自分ひとりで講座やセッションをやってきて、フリーランスがけして楽しいことばかりではないことも身に染みています。
なのでわたしはいつも率直に、
「申し訳ないのですが、そんなに簡単な話ではないと思います」
…と本音をお伝えすることにしています。
「好きを仕事にする」=「楽チン」ではない
とはいえ、わたし自身も独立するまでは「個人事業」というものに対して漠然とした憧れがありました。
もしタイムスリップできるなら過去の自分をひっぱたいてやりたいくらいですが苦笑、お恥ずかしい話、「独立して好きなことを仕事にすれば、きっと楽しく充実した毎日を過ごせるだろうなぁ」、なんて思っていたのです(若かった)。
ですが実際やってみた個人的感想としては、
「ある意味、会社員をやっていた方がよっぽど楽だったかもなぁ」
というもの^^;
一応会社員時代には、朝早く決まった時間に起き、長時間満員電車にゆられ、わずらわしい人間関係の中でもまれながら、あわただしく仕事を片付けまくり、帰宅は深夜…という勤め人ならではの辛さも大いに経験してきました。
ですが、決まった時間通りに動かなくてもよく、どこで仕事をしてもよく、どんな仕事をどれだけやるかも自分の裁量しだい…という「すべてが自由」な状況は、置かれてみると楽なようでいて意外と大変であることを痛感したのです。
なにしろ「自分以外に働いてくれる人は一切おらず、すべてが自己責任」なのですから。
わからないことや悩みが出てきたときも、基本的には相談相手がいない状況ですから、すべて自分で解決しなくてはなりません。
また、仕事の優先順位やペース配分も、すべて自分で決めることになります。
仮に仕事がたまったり突発的に許容量を超えたときにも、手伝ってくれる人はいないのでひとりで乗り切るしかありません。
もし体調を崩してしまえば、自分以外には働き手はいないのですべての業務がストップします。
何か失敗をしてもフォローしてくれる上司や同僚はいないので、すべて自分自身で取り返さなくてはいけません。
これが「自由」と引き換えにやってくる、フリーランスならではの辛さです。
「今度こそ本当に頭がハゲてしまうのではなかろうか」と思ったことは、一度や二度ではありません。
あと生々しい話かなりキツいのは、収入の見込みが立てにくいこと。会社員は普通に・真面目に勤務していれば毎月一定額のお給料が入ってきますが、フリーランスにはそれがありません。
正直わたしも最初の頃、軌道に乗るまではけっこうつらかったです。今でこそこのサイトを見つけ、いらしてくれる受講生さんやクライアントさん方がおりますが、独立序盤のような何の反響もない状況がもっと長く続いていたら、今頃脱落していたかも。
それに技術の面でも、ひとりでやっていくのであれば相応のブラッシュアップは常に欠かせませんので、「悠々自適な生活」とはなかなか程遠いのが現実だと思います。
わたしはもともと占いが好きですが、それでもなかなかに大変だなあと感じることはいまだにありますし、それは今後もずっと続くでしょう。
それが占いに対して思い入れがない方となれば、余計にキツいのではないでしょうか…。
資格が有効なケースは限定的
また、何らかの講座に出て占いの「資格」を取ればガンガン稼げるのでは?と思っている方も意外と多いようなのですが…
占いやスピリチュアルの世界において資格が有効な場面って、かなり限定的です。
たとえば「特定の占いやセラピーをやるために、定められた資格を取らなければならない」というパターンは結構ありますが、そういった場合その資格を取らないことにはそもそも活動自体ができないわけなので、取得するメリットはあるでしょう。
ですが、動機が「なんとなく持っていた方がよさげだから」とか、「なんかその方が仕事が来そうだから」というだけの場合は、残念ながらおすすめできません。
資格を取るために勉強するという「プロセス」そのものはプライスレスですが、多くの資格は取ったとしても権威付けがなされるのは発行元周辺の世界だけ。
なのでその範囲から一歩外に出れば、ほとんどの場合マイナスにもプラスにも働かないでしょう。
(むしろ発行元の評判が悪い場合、マイナスになることもありえます)
趣味なら全然OKなのですが、あくまでお金のために・仕事を得るために占いの資格を取りたい(=稼げるなら手段が別に占いでなくてもよい)ということであれば、申し訳ないのですが普通に履歴書に書けるような手堅い資格を取った方がよほどよい…とわたしは思います。
ちなみに…「占いの資格で稼げるのは、資格を発行する側」です。これはぜひ覚えておいていただければなと思います。
稼ぐことそれ自体は、悪いことではない。でも…
とはいえ、わたしは何も「占いで稼ぐこと」そのものは、特に悪いことではないと考えています。
(倫理的にアウトな売り方をして稼ぐのはもちろん絶対ダメですが…)
ですが個人的な経験上、それをするには最低限「純粋に占いが好き」という気持ちもないと、おそらく徐々にモチベーションを保つのが難しくなってきますし、クライアント側も受けるサービスに違和感を覚えると思います。
それに売るものへの敬意がないと、最悪売上重視で悪徳な方向性に舵を切ってしまうことも起こりうるでしょう。
こうしたことはおそらく占いだけでなく、他の分野でも一緒ですけれどもね。
もしあなたが「稼ぐこと」に何よりも強くフォーカスしているのであれば、あなたにとってその手段が「占い」である必要が本当にあるのか、今一度よく考えてみてください。
商売するうえで「売れるものを売る」ことは間違いなく大切ですが、その対象にある程度愛情がなければ、結局お仕事を続けていくことそのものが難しくなってしまいます。
それに占いは人の心にかかわる仕事なので、純粋にモノだけを売る商売とはまったく異なる繊細さも要求されてきます。
また、自由と不安定さが表裏一体である「フリーランス」という労働形態が、本当にあなたに安らぎをもたらしてくれるのか・性格的にフィットするかもよく吟味してください。
フリーランス=楽そう!という発想で無計画に転身すると、痛い目に遭うのは必至です。
独立するのであればその前に最低限、自分にできることはなにか、具体的に何を売るのか、どのようなスタンス・切り口でアピールするのか、それにあたって必要なものはなにか、をはっきりさせたうえで、数年分の事業計画をつくっておくくらいはした方がよいと思います。
(サイトやブログを見るたびにやっていることが節操なくコロコロ変わり、結局何屋さんなのかわからなくなっている方が時々いらっしゃいますが、そうした方はやはり「先に収入ありき」で、上記のような「コンセプト」をしっかり考えていなかったのだろうな、と思います)
今回はわたしが個人的に感じていることをつらつら書きましたが、現場からは以上です(‘◇’)ゞ
※ついでに追記
これまでフリーランス占い師のキツい面ばかり書いてきてしまいましたが、わたし自身はなんだかんだでやってみてよかったとは思っています。実際大変ではありますが、下記のような「いいこと」もありますので…。
・自分の力だけで仕事をするという貴重な経験ができる(シビアだけど充実感はある)
・占い会社の方針に左右されず、自分の占い観や良心に基づいた売り方ができる(このあたりは個人だと本当にのびのびとできます)
・占い会社にマージンをとられることがない
ただ、「フリーになったほうがいいですよ!」なんてことは、やっぱり口が裂けても言えないですね…。気軽にすすめられるような選択肢ではないです。